イブの対決
クリスマスイヴの日。ポエットはいつも以上にはりきってプレゼント配りのお仕事に出かけた…のだが。
ポエット「今日はクリスマスイヴ!今夜も頑張ってプレゼント届けるぞー!!…あれ?あっ、大変!袋に穴が開いてプレゼントが落ちちゃったよ〜!もうやだぁ…!!」
袋に穴が開いてしまい、大切なプレゼントが下に落ちてしまった。ポエットはそれを追いかけ地上へやってきた。するとそこには…。
ポエット「ふぇ〜ん…どこにいったんだろう…。」
デイヴ「うう…。」
ポエット「…あったあ!!」
デイヴ「お…お前か…いつもオレ様の頭にプレゼントぶつけてくれるのは…。今日のは特に…効いたぞ…。」
ポエット「あ…。」
デイヴ「あ…じゃねーよ。だいたいなんだこのでかいプレゼントは…。と、とにかく…早くどけてくれ…死ぬ…。」
ポエット「よいしょ…壊れちゃったかなぁ…。」
デイヴ「だいたいそんなもの布の袋に入れて持って行こうとするのがバカなんだよ!てゆーか、よくそんな重い物もてるな…。」
ポエット「えへへ…。」
デイヴ「よ〜し、良い機会だ!今夜はクリスマス対決といこうか!」
ポエット「クリスマス対決?」
デイヴ「そうだ!どれだけ沢山の夢としあわせを運べるかを競うんだ。ただやるんじゃつまらねぇから、負けたほうはこの仕事今日限りってのはどうだ!!」
ポエット「そんなのやだよぉ!」
デイヴ「へっ、負けなきゃいいのさ。お前とは決着をつけたいからな。2時間後、ここで待ってるゼ!逃げんなよ!」
ポエット「どうしよう…。」
デイヴがそのまま飛び出して行き、残されたポエットは困りはてながら町を彷徨っていると、神出鬼没の妖怪バンド『Deuil』がライブをしているところに遭遇した。
ポエット「ユーリさんたちだ!クリスマスライブ中なのかな?」
ユーリ「みんな、ありがとう…。」
皆が退場していくのを見ると、どうやら調度終わるところみたい。ポエットは裏に回ってみると、不意に声をかけられた。
アッシュ「あ!ポエットちゃん!やっぱりポエットちゃんだったっスね!」
ポエット「アッシュさん!」
アッシュ「いやぁ、ちょっとポエットちゃんが見えたような気がしたから…ここじゃ寒いから、中に入るっス!」
そう言って楽屋に案内されたポエット。そこにはユーリとスマイルの姿もあった。
ユーリ「ん?ポエットじゃないか。」
スマイル「ボクたちのライブを見に来てくれてたのかい?ありがとう。ヒッヒッヒッ…。」
ポエット「クリスマスも大忙しなんだね!」
ユーリ「まぁな。」
アッシュ「ポエットちゃんも、クリスマスは毎年忙しそうっス。」
スマイル「そうだね。今まだ仕事中だったりするのかい?」
ユーリ「…もしかして、何かあったのか?」
ポエット「うん…。」
ポエットは、先ほどの事をユーリたちに相談した。
ポエット「…っていうわけなの。」
アッシュ「そうだったっスか…。」
スマイル「せっかくのクリスマスなのにね。」
ポエット「ポエットは負けられないし、ポエットが勝てばいいっていうわけでもない気がして…。どうすればいいんだろう。」
ユーリ「ポエット…人を幸せにするというのはな、勝敗を競うものではない。お互い全力でやれば、勝負なんて付くものではないのだ。それを奴に教えてやればいい。」
アッシュ「ユーリが言うとなんか変っスね。」
ユーリ「うるさい。」
ポエット「えへへ、ありがとう。ポエット、がんばってみるね。」
スマイル「それよりいつも思うんだけど、その格好寒くないのかい?白の半袖ブラウスに黒のワンピースって。」
ポエット「このお洋服?」
アッシュ「たしかに…半袖じゃ寒そうっスよ…。」
スマイル「アッシュも上半身裸コートで寒そうだけどね。ヒッヒッヒッ…。」
アッシュ「オレは鍛えてるから大丈夫なんっス!」
スマイル「今夜は雪も降るみたいで、いつもより寒くなるからこれを着て行くといいよ。」
スマイルから受け取った箱の中には、真っ赤でふかふかなワンピースとケープが入っていた。
ポエット「わあっ!サンタさんのお洋服!もこもこで暖かそう!ありがとう、さっそく着てみるね!」
アッシュ「スマイル、なんでそんな衣装持ってるんスか!?」
スマイル「ボクの趣味だよ。いつかポエットちゃんに来てもらおうと思ってね…ヒッヒッヒッ。」
ポエット「ど…どうかなぁ…?」
アッシュ「ポエットちゃん、可愛いっスよ!」
スマイル「やっぱりボクの目に狂いは無かったね。ヒッヒッヒッ…。」
ユーリ「…よく似合っている。」
ポエット「えへへ♪」
ユーリ「ところで…もう間もなく時間なのではないか?」
ポエット「そ、そうだ!行かなきゃ…。」
アッシュ「がんばるっスよ!お仕事終わったらみんなでクリスマスパーティやりましょうね!オレが特製ケーキ焼いて待ってるっス!」
ポエット「うん、ありがと!いってきま〜す!」
そういうと、小さなサンタさんとなったポエットは、皆に見送られながら元気よく外へ飛び出して行った。
ポエットが待ち合わせ場所に到着すると、既に待っていたデイヴが姿を現した。
デイヴ「よぉ!逃げずによく来たな!」
ポエット「ポエットは逃げないよ!」
デイヴ「なんだその格好は?」
ポエット「サンタさんだよ♪」
デイヴ「そんなの見りゃわかるよ!」
ポエット「え??」
デイヴ「あー、もういい!始めようぜ!」
ポエット「うん!頑張るぞ〜!」
プレゼント配りの勝負が始まった。2人はそれぞれ町へと向かう。
ポエット「今度は袋大丈夫かなぁ。…今ビリッていったような…気のせいかな?あ、おっきなクリスマスツリー。綺麗〜。」
街の大きなクリスマスツリーのてっぺんに行き、そこから街を眺めるポエット。するとそこへ真っ白な雪が降りだした。
その頃ユーリの城に戻っていたDeuilの3人は、皆ポエットの心配をしていた。
アッシュ「ポエットちゃん大丈夫っスかねぇ…。」
ユーリ「うーむ…。」
スマイル「あっ、雪だよ!」
アッシュ「ほんと。きれいっスね。」
ユーリの城にも真っ白な雪が降ってくる。その雪を見ながら、ユーリたちはポエットの帰りを待っていた。 しかし、何時間たっても戻ってこないポエット。ユーリたちの心配はさらに大きなものへとなっていった。
アッシュ「…もうだいぶ時間がたったっスね。」
ユーリ「…私は少し様子を見てくる。お前らはここで待っていろ。」
アッシュ「え?オレも行きたいっス!」
スマイル「アッシュは飛べないからユーリの足手まといだよ。だからぼくが…。」
アッシュ「スマイル!なんっスかその言い方!」
ユーリ「スマイル、お前も留守番だ。パーティの準備でもしていろ。」
スマイル「…わかったよ。」
ユーリは急いでポエットのもとへと向かう。 しばらく探し回っていると、ユーリは人通りの少ない道の片すみに座りこんでいるポエットを見つけた。
ユーリ「ポエット…あんなところに。」
ポエット「…。」
ユーリ「ポエット。」
ポエット「あっ…ユ、ユーリさん…。」
ユーリ「どうしたんだ、急に泣き出して…。」
ポエット「…見つからないの。」
ユーリ「プレゼントが…か?」
ポエット「うん…。いくつか落としちゃって…。どうしよう、このままじゃ…!」
ユーリ「まったく…。泣くな、私も一緒に探す。」
ポエット「ほんと?」
ユーリ「ああ、ほんとだ。だから泣くな。」
ポエット「う、うん!」
ユーリ「私はこっちを探す。」
ポエット「ユーリさん…。」
ユーリ「なんだ?」
ポエット「ありがとう…。」
ユーリ「礼はプレゼントを見つけてからだ。」
ポエット「うん!」
その頃ユーリ城では、アッシュとスマイルがクリスマスパーティの準備をしながら2人を待ちわびていた。
アッシュ「ユーリまで帰ってこないっス。なんかあったんっスかね?」
スマイル「二人でクリスマスパーティしてたりして…ヒッヒッヒッ。」
アッシュ「ユ、ユーリはそんなことするヤツじゃないっス!オレは信じてるっス!!」
スマイル「ぼくたちも二人でやるかい?ヒッヒッヒッ。」
アッシュ「ぜったいやだっス!」
落としたプレゼントを探すユーリとポエットだが、残りの1つがなかなか見つからずにいるのだった。
ポエット「あとひとつ、どこだろう…。」
ユーリ「あれは…大きなクリスマスツリーだな。」
ポエット「そうだよね。ポエットも最初来た時はビックリしちゃった。この木のてっぺんまで行って町を眺めてたの。」
ユーリ「じゃあもう一度てっぺんに行って高いところからプレゼントを探すか?」
ポエット「え!?」
ユーリ「冗談だ。」
ポエット「…そうしよう!」
ユーリ「ん!?」
ポエット「行こう!ユーリさん!」
ユーリ「ちょ、ポエット!?」
ユーリの手を引き、ツリーのてっぺんへ一番高いところで2人並んで座り込んだ。
ポエット「いい景色だね!」
ユーリ「…まったく。」
プレゼント探しも忘れて冬の町の景色を楽しむ2人。冷たい風の中、自然とよりそう2人の足元には、ポエットには見覚えのある箱がツリーに引っかかっていた。
ポエット「あっ…あった!!」
ユーリ「?」
ポエット「これだぁ!」
ユーリ「ツリーのてっぺんに落ちていたとは…。」
ポエット「ユーリさんのおかげだよ!ありがとう!」
ユーリ「早くそれを届けてこい。もう落とすなよ。」
ポエット「うん!!」
急いで待ち合わせ場所へ向かうポエット。そこには既にデイヴの姿があったのだが…。
デイヴ「…よ、よお。」
ポエット「あれ、どうしたの??」
デイヴ「オレ様のソリが車にぶつかって…事故っちまったんだ。プレゼントはバラバラになっちまうし、仕事どころじゃなくなっちまったぜ!ちくしょう!!」
ポエット「そうなんだ…。」
デイヴ「笑えよ!笑えばいいさ!悔しいがお前の…勝ちだ。オレ様はこの仕事は辞める…。」
ポエット「デイヴさん…。」
デイヴ「なんだよ…。」
ポエット「ここで諦めちゃダメだよ!また一緒に頑張ろうよ!今度は勝負じゃなくて。ね?」
デイヴ「お前…。」
ポエット「?」
デイヴ「こんなオレ様に…優しくしてくれるのか?」
ポエット「だって、ポエットたちは同じ、みんなを幸せにするためにいるんだから!」
デイヴ「へへっ、そうかよ。お前ってやつは…。オレ様が間違っていたぜ!次またあったら、その…よろしくな!」
ポエット「えへへ♪」
ポエットとデイヴは仲直り。また一緒に頑張ろうという約束を交わした。 そして、ポエットはとても嬉しそうにユーリたちの待つお城へ向かうのだった。
アッシュ「ポエットちゃんおめでとうっス!!」
ユーリ「無事に終わってよかったな。」
ポエット「みんな…。」
アッシュ「ほら、料理出来てるっスよ!みんなでパーティっス!!」
スマイル「今日もアッシュは気合いが入ってるなぁ…ヒッヒッヒッ。」
ポエット「おいしそう…。」
アッシュ「ほら、冷めないうちに!」
ポエット「うん!」
今夜はみんなでクリスマスパーティー。この夜は、お仕事を頑張ったポエットへの最高のプレゼントとなった。
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