緑の丘を駆け抜ける旋律(メロディ)
ポエット「一雨来そうだなぁ…はやくかえらなきゃ!」
今日もお仕事を終えて帰る途中のポエット。空は夕闇よりも暗く、今にも大雨が降り出しそうな天候だった。
ポエット「わぁっ!降ってきちゃった!」
空を飛んでいるポエットに容赦なく降り付ける大雨。雨宿りをしようとして降下をし始めたその時、大きな雷が鳴り響いた。
ポエット「!!」
体を裂くような雷の大音量に驚いたポエットは、バランスを崩してしまいそのまま落ちてしまう…。
そうしてどれくらい経っただろうか。綺麗な歌声で目を覚ましたポエット。
ポエット「うみゅ…ポエット、どうしちゃったんだっけ…。ここはどこ?」
辺りを見回すポエット。どうやらここは森の奥深く。体には葉っぱのクッションがかかっている。誰かが助けてくれたみたい。
ポエット「そっか。ポエット、雷に驚いて落っこちちゃったんだった。それにしても…キレイな歌声。どんな人が歌ってるんだろう…。痛ッ!!」
起き上がろうとするが、落ちたときに負ったであろうケガの痛みがポエットを襲う。手当てはされているが、まともに動けるものではない。しかし助けてくれた人を気にせずにはいられないポエットは、痛みをこらえながら歌声の主の元まで行こうとするのであった。
そして、やっとの思いで声の主まで辿り着く。森の綺麗な水辺で歌を歌っている妖精のお姉さんだった。
ポエット「あ、あのぉ…。」
シルビア「!!」
一瞬驚いたそぶりを見せたが、その声の主がポエットだと分かると、その表情はゆらいでいった。
シルビア「あ、あなた…目が覚めたのね。まだ寝てなきゃダメよ、怪我してるんだから…。」
ポエット「え、あ…うん。」
言われるがままにお姫様だっこではっぱのベッドまで連れて行かれるポエット。やっぱりこの人が助けてくれたんだ…と、ポエットは思うのだった。
ポエット「えっと…あの。」
シルビア「なあに?」
ポエット「助けてくれてありがと!」
シルビア「フフフ…良いのよ。」
ポエット「えへへ。キレイな歌声だね。お名前なんていうの?」
シルビア「ありがとう、シルビアよ。あなたは?」
ポエット「ポエットだよ。」
シルビア「ポエットちゃん、はやく怪我を治さなきゃね。」
ポエット「うん。(やさしいお姉さんだなぁ…。)」
この日はそのまま眠りについてしまう。こうして怪我が治るまでの数日間、ポエットはシルビアと森で過ごすのであった。
そして数日が経ち、ポエットの怪我もほぼ完治した。
ポエット「本当に、ありがとう!」
シルビア「治ってよかったわ。」
ポエット「ポエット、もう行くね!」
シルビア「寂しくなるわ。またいつでも遊びにおいで。」
ポエット「うん!」
シルビア「じゃあ、気をつけてね。」
ポエット「ばいばーい!」
シルビアと別れを告げ、森の出口を目指して進むポエット。しかし、思わぬ罠が待ち受けていた。
ある程度森の中を進んだ時、突然茂みから無数の蔦が飛び出した。そしてその無数の蔦がポエットを襲う。
ポエット「ひゃッ!!な、なにこれ!?」
蔦はあっという間にポエットを捕らえ、ポエットは身動きが取れない状態になってしまう。
ポエット「う…動けないよぉ…!た、たすけて…ッ!」
蔦はポエットの小さな体を容赦なく締め付ける。そこへシルビアが息を切らして走ってきた。
シルビア「おやめなさい!」
シルビアのその一声で蔦は茂みに戻っていく。ポエットはその場で崩れるように倒れた。
シルビア「ごめんね。人間が入ってこられないように、罠を仕掛けてたのを忘れてたわ…。」
ポエット「わな…?」
シルビア「この際だから言うけれど、私人間が嫌いなの。木を平気で切り倒していく人間が…。」
ポエット「そうだったんだ…。」
シルビア「だから、この森を守るために、人間が入ってこられないようにしているのよ。」
ポエット「で、でも、人間でもみんな悪い人じゃないよ!いい人だっていっぱいいるよ!それは、中には木を切っちゃう人もいるかもしれないけど…、でも、でもみんながそうじゃないんだよ!」
シルビア「…そうよね。ポエットちゃんが言うならそうかもしれない。でも、私の人間嫌いは変わらないわ。」
ポエット「シルビアさん…。」
今までに見せなかったシルビアの表情に、ポエットは困惑する。うまい言葉が見つからない。そしてシルビアのために何も出来ない自分をもどかしいと思うのだった。
シルビア「…それより、ビックリさせちゃってごめんね。私が森の出口まで連れてってあげる。」
ポエット「あ、ありがと!」
いつもの笑顔に戻ったシルビアを見て少し安心するポエット。シルビアの事を少し気にしながらも、2人は手を繋いで森の中を歩いていく。そして、シルビアの案内でようやく森の出口まで辿り着いた。
ポエット「本当にありがとう!」
シルビア「次はちゃんと気をつけるのよ。」
ポエット「うん!」
シルビア「ポエットちゃんは襲わないように言っておくから、よかったらまた遊びにおいで。あなたなら歓迎するわ。」
ポエット「えへへ、また遊びにくるね!」
こうしてシルビアと別れを告げ、森を後にするポエット。次はシルビアを幸せに出来たら…と思いながら帰るのだった。
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