夏の図書館




風が緑に変わる季節。ポエットは、涼しげな河原の木陰でのんびりしていた。


ポエット「もうすっかり夏。暑くてもがんばるぞ〜!」


そこへやってきたのは睦月。いつものスケッチブックに加え、なにやら本を入れた手提げ袋を持っていた。


睦月「あれ?そこにいるのはポエットちゃん?」

ポエット「あ、睦月さん!こんにちは。今日も暑いね!」

睦月「そうだね。」

ポエット「こんなところでなにしてるの?」

睦月「今からちょっと図書館に行こうと思ってね。借りた本を返しにいくところなんだ。」

ポエット「そうだったんだ〜。」

睦月「よかったら一緒に行くかい?」

ポエット「行く〜!」


こうして2人は夏を想わせる虫たちの鳴き声聞きながら、木陰の道の奥にある小さな図書館へと向かった。


睦月「やっと着いたね。」

ポエット「へぇ〜、これが図書館かぁ。」

睦月「…もしかして、ポエットちゃん図書館初めて?」

ポエット「うん!」


初めての図書館にはしゃぐポエット。弱めな冷房のかかった室内に入ると、2人はまず本の返却口に向かった。
ポエットは珍しいものを見るかのように辺りを見回している。


ポエット「中はけっこうひろいんだね〜!それに本がいっぱい!すご〜い!」

睦月「ポ、ポエットちゃん…!」

そこへやってきた図書館の司書。本が積まれたカートを押しているところを見れば、本を棚に戻しているところのようだ。


ミシェル「図書館ではお静かにお願いしますね。」

睦月「あ、ごめんなさい…。」

ミシェル「今日はお一人ではないのですね。」

ポエット「睦月さん、この人だぁれ?」

睦月「ここの司書をしてるミシェルさんだよ。」

ミシェル「よろしくお願いしますね。」

ポエット「あ、うん!よろしくね〜。」

睦月「お忙しそうですね。」

ミシェル「ええ、夏休みですから。学生の方が沢山いらっしゃってますね。」

ポエット「ポエット、おてつだいする〜!」

睦月「こらこら。ミシェルさんのお仕事の邪魔しちゃいけないよ。」

ポエット「え〜、ポエットじゃましないもん!」

ミシェル「フフ、ありがとうございます。ではちょっと手伝ってもらいましょうかね。」

ポエット「えへへ。ポエットがんばるからね!」

睦月「もう…。」


こうして、ミシェルの役に立とうと張り切ってお手伝いをはじめたポエット。それを見守る睦月。
お昼過ぎになり、さらに人が増えてくる。


ミシェル「では、この本をここの棚に戻してもらえますか。」

ポエット「は〜い!」


カートに積まれた本を棚に戻すポエット。忙しいはずのミシェルも微笑みながら様子を見ているのだった。 その時、うまく戻せていなかった本が落ち、一気に本が崩れ落ちてしまう。


ミシェル「!!」

ポエット「ふぇぇ!!?」

睦月「だ、大丈夫!?」

ミシェル「お怪我はありませんか?」

ポエット「う、うん…。でもまたやり直しだよぉ…。」

睦月「あーあ…やっぱりミシェルさんの邪魔して…。」

ポエット「ふぇ〜ん、ごめんなさい…。」

ミシェル「大丈夫ですよ。お怪我が無くて本当に良かったです。」


ポエットが散らかしてしまった本を戻すミシェル。それを申し訳無さそうに見ているポエット。
そこへ子供たちがやってきて、ポエットは本を読むようにねだられてしまう。


ベリー「おねーちゃん!このごほんよんで〜!」

シャルロット「こっちも…よんでほしいの…。」

RGB「えー、ずるいずるい!こっちよんで〜!」

アリシア「これ読んでくれないと今度のお茶会に呼んであげないから。」

ポエット「わぁ〜!ちょっとまってよぉ!」

睦月「(僕じゃなくてよかった…。)」

ミシェル「あ、いつもの子供たちですね。捕まったらなかなか放してくれませんよ。」

睦月「そ、そうなんですか!?でもポエットちゃんにはこっちのほうが適任かもしれないですね。」


戸惑いながらも子供たちに本を読んであげるポエット。それを見守りながら仕事をこなしていくミシェル。様子を見ながら読書をする睦月。
そうしているうちに夕暮れ時になり、閉館時間が近づいてくるのであった。


ポエット「もうこんな時間かぁ。」

睦月「だいぶ長居しちゃったね。」

ミシェル「1日はあっという間ですね。僕はこれから閉館作業に入りますが、そのまえに良かったら紅茶でも飲んでいきませんか?」

睦月「え、いいんですか?」

ポエット「じゃあ飲む〜!」


ミシェルに奥の部屋へと案内される2人。普段入れないところに入る2人は、少し緊張しているようだった。


ミシェル「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」

睦月「そうは言っても…でも裏にも本がいっぱいだなぁ…。」

ポエット「すごーい…。」

ミシェル「では、紅茶を入れてきますのでちょっと待っててくださいね。」


そういって席を離れるミシェル。しばらくして紅茶とケーキが乗ったトレーを持ってミシェルが入って来る。


ミシェル「どうぞ。僕の好きな紅茶とケーキです。お口に合うといいのですが…。」

ポエット「おいしい!」

睦月「僕も、この紅茶好きです。」

ミシェル「良かった。」


何気ない会話で盛り上がる3人。
ふと、ポエットが端に積まれている本の中で、ある本に興味を持った。


ポエット「この本…。」

ミシェル「あ、その本ですか。僕も好きな天使の本ですよ。」

睦月「いろんな天使さんが載ってるんだね。ポエットちゃんは載ってないのかな。」

ポエット「ポエットはのってないよぉ。でも、ポエットもいつかこんなりっぱな天使になりたい!」

ミシェル「ポエットちゃんはとっても前向きだから、きっと素敵な天使様になれますよ。」

ポエット「えへへ。がんばるぞ〜!」

睦月「本当にいつも元気で前向きだもんね。」

ミシェル「フフフ…。応援していますよ。」

ポエット「今日はとっても楽しかったよ!また来てもいい?」

ミシェル「ええ、いつでも待っていますよ。」

ポエット「わ〜い!」


気がつけば外はすっかり暗くなっていた。涼しげな日暮れ、図書館を出る2人。
ポエットは、またひとつ立派な天使に近づけたような気がするのであった。




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